地震ですべてを失った酒蔵…白山市の酒蔵の協力得て再出発　そこにはふるさとへの思い

04/24(水) 18:33

能登半島地震で大きな被害を受けた珠洲市蛸島町。

この漁師町で古くから親しまれてきた酒蔵もすべてを失いましたが今新たな地で酒造りを始めています。

そこにはふるさとへの思いがありました。

珠洲市蛸島町（たこじままち）。

櫻田酒造　櫻田博克（さくらだひろよし）さん：
「ここはですね、店舗ですね。お店の玄関口になります。地震でガチャっと道路のほうに倒れちゃいまして…」

大きな揺れが一瞬にして全てを壊しました。

櫻田酒造。

漁師が多く住むこの町で大正時代から100年以上愛されてきた酒蔵です。

櫻田さん：
「中はこんな感じです。とても酒が造れるような状態じゃないですよね。」
「この機械の隙間に、この下にいてですね、無傷で助かったんですけど・・・」

4代目の櫻田博克（さくらだひろよし）さん。

櫻田さん自身は危機一髪、無事だったものの自宅も酒蔵も全壊。

今年どころか今後の酒造りも諦めていました。

櫻田さん：
「正月明けてから酒を造ろうかということだったんですけどね1日にあんな大きい地震来ましたからね…」

そんな櫻田さんの背中を押したのは瓦礫の中から見つかった酒米でした。

櫻田さん：
「能登瓦がずしんと潰れたんですけどその下で雨に耐えて雪にも耐えて残ってたんですよね。本当に出てきたときはですね、本当にうれしくて・・・」

櫻田さんの姿は白山市の酒蔵にありました。

案内されたのは櫻田さんのために割り当てられたタンクです。

ここで酒造りをさせてもらえることになったのです。

櫻田さん：
「ワクワクしてきましたね。」
車多社長：
「何よりも30年来の友人ですので大変困っていらっしゃるということで何か手助けにならないかと思って声をかけたのがきっかけです。普段飲んでいらっしゃる方に届けるのはもちろんなんですけど、全国の人にも大慶というお酒をぜひ知ってほしい」

瓦礫の中から救い出した酒米を使って今年の酒造りが始まりました。

作るのは「大慶（たいけい）」という銘柄。

魚にあう日本酒として蛸島の漁師の食卓には欠かせないものでした。

櫻田さん：
「おそらくうちの創業した場所が蛸島町ではなくて隣町とかでしたら今はもうなかったんだろうなと思うくらい蛸島の皆さんには大事にしてもらいました」

白山市で作っていても頭の中にあるのはふるさとのこと。

蛸島の日常を取り戻したい…櫻田さんの思いです。

そんな櫻田さんに心強い味方がついてくれました。

長男の慎太郎（しんたろう）さんです。

東京の大学で醸造を学ぶ慎太郎さん、今回の地震を機に家業を継ぐことを決意しました。

慎太郎さん：
「東京で過ごしている時に父のテレビとかを見て絶望というか、全てがなくなった絶望のときから前を向いて頑張っている父を見て全然素人で本当にわからないので迷惑かけるかもしれないですけど頑張っていこうと思っています」

櫻田さん：
「息子と一緒に酒造りをしたいなというのは言えてはいなかったんですけど私の心の中ではずっと思っていたので、息子も家を継いで大変な道になると思うんですけど」一緒に頑張ってくれると言ってくれましたんでそれは良かったですね。」

かつての酒蔵が瓦礫に埋もれたままでも櫻田さんは前を向いています。

蛸島の地に、もう一度大きな花を咲かせるためスタートを切りました。