石川テレビ

石川テレビ 8ch

石川県内ニュース

復旧進まず児童生徒数が半減した珠洲市宝立町...日常を取り戻すための町の決断とは

元日の地震で特に大きな被害を受けた 地区の1つが珠洲市宝立町(ほうりゅうまち)です。8カ月が経っても断水が続くなど地震の爪痕が深く残る町。この町に暮らす住民たちの今を見つめます。

あの日から8カ月。

多田進郎避難所本部長「あ、ブドウや」

気づけば季節は夏の終わりになりました。
珠洲市宝立小中学校避難所。

住民「うちも水来てない」
多田進郎避難所本部長「あそこは水きとるん?」
住民「まだですよ」
多田進郎避難所本部長「この辺はだいたい水きてる。家の前までは」

宝立小中学校の避難所本部長、多田進郎(ただしんろう)さん(70)。
自宅が全壊と判定され仮設住宅に入ったあともボランティアで避難所の中心的な役割を担っています。

多田進郎避難所本部長:
「ここにいる人は半壊の人が多い。ただ半壊以下の人もいる」
Q準半壊だけど水が出ない?
「そう」

夫婦と父親の3人家族、梶山さん一家。

梶山勉さん:
「ここで一番長老、98!」

自宅の1階は高さ2メートル近くまで津波が入りました。

梶山勉さん:
「これで全壊じゃないんだよ。」
Q全壊じゃないんですか?
「な、思うやろ。建ってるもん、傾いてないからダメ」

判定は「大規模半壊」なかなか仮設住宅が回ってきません。

梶山勉さん:
「これで全壊にならない。なあ、ばっかみたいもんやろ…」

多田進郎本部長:
「まだ仮設に入れない、いつ入れるの。どこに矛先を向けていいのか分からない。ストレスが溜まっている。同じ体験なら分かるけど今は分からない。だから聞くのがやっとこやっとこや」

半農半漁の暮らしを続けてきた宝立町。地震と津波でその営みは一変しました。倒壊家屋が水道復旧の妨げとなり上下水道はいまだに整っていません。

断水が続く中で、避難所を出る選択をした人もいます。
寺山広悦(てらやまこうえつ)さん(72)。

寺山広悦さん:
「このタンクに水入れて、1トンタンク」

毎日、知人に生活用水を運んできてもらっています。

寺山広悦さん:
「それにしても水道こないと、水が来ないと都合悪いやろ。電話回線も来ていません。来ているの電気だけ」

漁船の整備を行う作業場兼自宅は「半壊」と判定されました。

近所の男性:
「消滅区域やからこんなところに金をかけるなって話になってしまっている。だから最低限のことしかしてくれない。普通これ東京で橋落ちとってみ。ほんなもん1カ月もかからんうちに修復してしまうはずや。」
寺山広悦さん:
「水道も8月いっぱいでほぼ100パーセントにするって言ってるけどならん」
近所の男性:
「とにかくダメねんわ。ここあと10年すれば住む人いなくなるよ」

珠洲市の30、40代の人口はこの1年で3割減りました。
宝立小中学校も児童生徒数は66人から36人に減りました。

8月15日、町は盆踊り会を開きました。開催は5年ぶりです。

多田進郎避難所本部長:
「地震でバラバラになったんだけど、宝立町民がまた一体感もってやれるようになれば。そう簡単にはいかないんだけど」

仮設住宅や2次避難先から…たくさんの人が集まりました。

夏休みが終わりに近づいたころ仮設住宅の1つが完成し、一気に14人が避難所を出ました。

多田進郎避難所本部長:
「多田だけど、宝立公民館て水道使える?」「一回行ってやってみるか」

多田さんたちはある決断をしていました。

多田進郎避難所本部長:
「どうやった?」
業者:
「多分漏れてないね、これなら」
多田進郎避難所本部長:
「大丈夫なんですね」

断水が解消した公民館に避難所を移すことにしたのです。

避難所に住む人女性:
「しょうがないなって、とりあえずあそこへお世話になろうかなって」
避難所に住む男性:
「いずれはここ(学校)は出なきゃならないから」
Q2人とも仮設住宅は申し込んで?
避難所に住む男性:
「きのう当たりました。でもまだ1カ月先」

避難所にいた24人はここで仮設住宅や自宅に住めるようになる日を待ちます。

多田進郎本部長:
「60人の在籍の子どもたちのうち今30人しかいない。なのでやっぱり学校が元に戻ったんだっていうのは、子どもたちにとってもそうだし地域にとっても『あ、学校が元に戻ったのか』と。避難所でなくなったよっていうことを発信していくということで、宝立の町が少しずつ前に向かってるよと。」

半壊の自宅で生活する寺山さん。

寺山広悦さん:
「やっと瓦屋さんが来て、きのう足場を組んでいったんやけど」

2月に頼んだ屋根瓦の吹き替えがようやく始まりました。

寺山広悦さん:
「家はここしかないし。新たにまた建てるというわけにいかんし。まあ何とかしのいでいけるからいいかって」

きょうも作業場にはお客さんの姿。

最近のニュース