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「やりたいという反面、大変やな」能登人を訪ねて…七尾市能登島町向田「向田の火祭り」への思い

能登に根差す「能登人(のとびと)」を訪ね、復興にかける思いを伺う「能登人を訪ねて」今回は七尾市の能登島向田町で民宿を営む能登人です。

稲垣:
波穏やかな能登島の向田漁港です。しかし、この漁港にも地震の爪痕は今もこのように生々しく残されています。道路から岸壁に向かって地面が下がってしまっているんですね。こうした中でも、能登島の象徴である向田の火祭りは、震災を乗り越え、今年の開催が決まっています。今日は能登島向田の能登人に会いに生きます。

七尾市能登島向田町の民宿、島宿せがわを訪ねました。

稲垣アナ:
お久しぶりです!

取材を通して知り合い、公私ともにお付き合いしている瀬川勇人さん夫妻。勇人さんが能登島の食材を使って作る料理が評判です。現在は一般客を受け入れておらず、復興支援に携わる作業員の宿舎として運営しています。

稲垣アナ:
ブルーシートがものすごく痛々しいですけど元日の地震はどうでしたか?
瀬川勇人さん:
もう、動けんかったね、地震の瞬間は。大きなガラスが全部ガチャガチャに割れて…店舗の中も亀裂が入っています。
稲垣アナ:
津波はどうでしたか?
勇人さん:
あの白い建物が農協なんですよ。あの手前まで津波が来ていました。
妻の由美子さん:
船も陸に上がっていましたし…車で生活していました。
勇人さん:
布団を積んで、車中泊です。向田町の多くの家で井戸水が使われています。

水を吸い上げるポンプは、電動式。電気さえ通れば水が確保できるという状況でした。

勇人さん:
1月3日の8時か9時頃でした。これ(自動販売機)が明るくなった。「ああ、電気が来たな」って!
由美子さん:
(家は)井戸水なんですけど、ポンプで汲み上げなきゃいけないんで。電気が来たら水も使えると、お風呂も使えると。
稲垣アナ:
電気が戻って水が戻った時、どんなことを考えましたか。
勇人さん:
(1月)10日、15日あたり頃から電話がかかってきますよ。作業員の方が泊まりたいというような予約をいただいて…これは早く片付けしないとと、なおさらエンジンがかかりました。

作業員の頑張りにおいしい料理で応えたい。島で手に入らない食材は、車で20分ほど離れた田鶴浜町のスーパーまで買い出しに出向きます。

稲垣アナ:
(作業員の方は)いつも帰ってくる時はヘトヘトですか。
勇人さん:
晩飯を楽しみにしていますね。
稲垣アナ:
そうでしょう。1日ずっと働いとったら…

田鶴浜町のスーパーへ向かった。

勇人さん:
ここ魚を入れてや
稲垣アナ:
今金沢ではこんなに七尾産の魚を見ませんよ。ずらっと並んで…
勇人さん:
今日はテレビ来るから特別に入れているじゃない(笑)
稲垣アナ:
能登島から田鶴浜までの時間がかかるじゃないですか。なのに、あえてここのお店に?
勇人さん:
能登島にえの目という漁港があってここはそれに近いような魚を置いてあるからね。

向田の夏の風物詩、向田の火祭り。今年の開催が決まりましたが、祭り男でもある瀬川さんです、複雑な思いを抱えていました。

稲垣アナ:
瀬川さん、建物に書いてある「向田の火祭り」ですね。住民の方にとっては、やりたい、やらなければならない。そんなものがあるんですか?
勇人さん:
やりたいという反面、また大変やなという反面もあります。
稲垣アナ:
大変やなというのはどういうことがあるんですか?
勇人さん:
準備するまでの作業工程がやっぱりね…

祭りの準備を進めているというご近所さんを紹介してもらいました。

勇人さん:
こうしてちゃんと準備しているんです。

松明の材料である”しば”集めは、地区すべての家が行います。

勇人さん:
家一軒に対して7つ。
向田町の女性:
ここに生まれてここに育っているから、こういうしば作りをせなならん、ということを小さい時から見てきているから…
稲垣アナ:
今年やるということについてはどのように思いますか?
向田町の女性:
私個人としては、どっちかというと反対です。とはいいながらも、作らんならんし作ったんです。山歩きしとっても「これいいしばやな」と常に頭の中にインプットされていて…今の若い人はこのしば作れるかな。
稲垣アナ:
僕らは本当に勇壮に燃えているところを見せてもらって、綺麗やなって見ていたんですけど、支える皆さんはこんなに大変なんですか…
向田町の女性:
大変です。これ作るの。
勇人さん:
当日までに作業工程があって、ちょっと我々世代は反対でした。

しかし、瀬川さんは町の若者の意見を聞くうちに賛成の立場を取るようになりました。

勇人さん:
コロナで2年間まつりが開催できなかったので、今の若い人が「これでもう一回沈んだらなかなか次のまつりの開催は難しいだろう」という話で、まつり開催に踏み切った。「まつり」と「イベント」の違いですわね。まつりは「継承」やからね。昔の流れで行くしきたりやから…これから背負っていく若い世代がやろうかという感じになると、自分だとしたらついていくほかなかったです。

稲垣アナ:
実際やることになったという。今の時はお気持ちはどうですか?

勇人さん:
あとは成功させるだけですね。気持ちは切り替えて、協力的になってやっていくだけです。

瀬川さんが今を生きる希望、それは向田の火まつりのバトンを次の世代に渡すこと、そして、能登の復興をこの目で見続けることです。

勇人さん:
通常のお客さんが来て初めて復興ができたかなという実感になると思いますよ。
由美子さん:
私らもお客さんの笑顔を待ち望んでいるんで…
稲垣アナ:
笑顔が戻ってくるまで、またぜひ頑張ってください。ありがとうございました!

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