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地震で大きな被害を受けた県内唯一の焼酎蒸留所…それでも前を向く理由

ここからは特集チューモクです。
こちらは去年9月阪神タイガースの優勝で注目を集めた焼酎「虎の涙」。
この焼酎を造っていたのは珠洲の蒸留所です。
地震で大きな被害を受けながらも焼酎造りを続けると決めた社長の思いに迫りました。

「虎の涙」と名付けられた美しい琥珀色の酒。
去年秋、阪神タイガースが18年振りの優勝を果たした際、話題となった焼酎です。

この焼酎を作っているのは珠洲市野々江町の「日本醗酵化成(にほんはっこうかせい)」
県内ではただ一つ焼酎専門の蒸留所です。

藤野社長:
「焼酎には欠かせない設備」「配管とかが切れている部分もありますし使おうと思うと整備が必要ですし直すよりもここは処分して建物も古いので…」

3代目社長、藤野浩史(ふじのひろふみ)さん。

おととし6月、去年5月と2度の大地震で被害にあい、去年秋の阪神フィーバーでようやく復興へと歩みを進めた時に再び地震が襲いました。
焼酎の元となる原酒が入った樽は…

藤野社長:
「電気も付かないですけど…ここは漏れてます。これが蒸し器。一番最初の仕込みの時麦を蒸す時に使う機械でいまはどれも使えない。なかなかちょっと直せてないのは悲しいというか悔しい思いでいますね」

焼酎の蒸留所は県内唯一のため他の酒蔵に頼ることもできず、今できるのは揺れに耐えた焼酎を飲んでもらうことだけです。

藤野社長:
「年末に詰めて無事だったお酒をクラウドファンディングの返礼品として利用するのに袋詰めしています」
「いま改めて瓶詰めもできないのですごく今は貴重なお酒です」

藤野社長はクラウドファンディングで資金を集め、まずは残った焼酎の瓶詰めから再開しようと考えています。
従業員の雇用を守るためです。

藤野社長:
「(従業員の)人数減らしたりとかっていう考えもあるんですけど、従業員にも生活があるし、仕事がないと地元から離れたり、離れたくなくても離れざるをえないというか」
「私が思ってるだけかもしれないけど仲良くこういうつらい地震があっても助け合って笑い合っていってる会社だと思います」

そんな藤野社長を勇気づけるのは家族のこんな支えでした。

今年2月。
藤野結大(ふじのゆいと)さん:
「僕の家は70年以上前から焼酎を作る店をしている。やまない地震を知って励ましの電話をかけてくれた人がいた」

息子の結大(ゆいと)さんが、去年の被災体験を書いた読書感想文が内閣総理大臣賞を受賞したのです。

藤野社長:
「どっちかっていえばこういう地震があって私たちが子どもを励まさないといけない立場なんですけど逆に子どもに励まされたというか」
結大さん:
「不安な気持ちを支えてくれた身近な人たちの言動に僕は心を感じた」
母・藤野裕子さん:
「受賞を受けた2月の時は地震のショックで会社のこととかあまり考えられなくて、気持ちが沈んでいた時期だったので、息子の文章を読んで背中を押されたような、私たちも頑張らなきゃなと、力をもらいました」

2年間で3度の大地震。
藤野社長は珠洲を離れることも考えましたが、家族と従業員を守るため県内唯一の焼酎をこの地で作り続けることを決めました。

藤野社長:
「またここで焼酎を仕込んで支援してくださったお客様とか問屋さんに少しでもいい商品を作ってそれをまた返せるようにしたいなという気持ちです」

クラウドファンディングは通販サイト「COREZO(コレゾ)」で5月31日までです。

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