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移住しゲストハウスオープン目前で能登半島地震の被害…それでも輪島市に残る男性の思い

江戸時代、幕府の直轄地として栄えた輪島市の黒島地区。
伝統と歴史が残り伝統的な建築物が並ぶこの場所に魅せられ移住した男性が、復興を目指し活動をしています。
その思いを取材しました。

輪島市の黒島(くろしま)地区です。
北前船(きたまえぶね)の寄港地として江戸時代から海運業で栄えた街ですが元日の地震で多くの建物が被害を受け、その面影は見ることが出来ません。
この黒島地区で立ち上がる能登人にきょうは会いに行きます。

能登半島地震の発生後、私たち石川テレビの取材班が黒島地区を訪れたのは1月6日。
多くの被害が見られ、後片付けに精を出す人たちが多くいました。
そんな時、建物の前でたたずむ人がいました。

杉野さん:
「今年の夏にゲストハウスをオープンする予定で、その改修を進めていたんですけど、地震で(建物が)崩れて。落ち込んでどうしようもないという感じではなく、これからどう挽回してやっていくかという気持ちです」

そう答えてくれた杉野(すぎの)さんを訪ねました。

杉野智行(すぎのともゆき)さんは津幡町生まれ。
海沿いの風景と街並みの美しさにひかれ、3年前ここ黒島地区に移住しました。
人が集まるゲストハウスを開業しようと去年古民家を買い取り、準備を進めていた矢先に地震が起こりました。

稲垣アナ:
「立派に立っているように見えますよね」
杉野さん:
「僕も最初ここに来たときは、意外といけるんじゃないかなと思ったんですけど、建物全体が道路側に傾いていて、中に入るとかなりひどいですね」
稲垣アナ:
「ゲストハウス黒島、2024年夏オープン。今はどうなっているんですか?」

杉野さん:
「全壊判定を受けて、専門家の方にも未練がましく何度か見ていただいたんですけども、みんな口をそろえてダメだっていうことなのでこれは使えなくなった。まだオープン告知は、はがしたくなくってはがしてないんですけど」

黒島が大好きな杉野さんに街を案内してもらいました。

稲垣アナ:
「神社と書いてあるということは、鳥居があったんですよね」
杉野さん:
「ここに大きな鳥居が立っていて、地震の直後は真ん中に倒れてたんで、ここは通行できないような状態でしたね。お祭りのときとかも奥の階段から神様が降りてくる場所なんです」
稲垣アナ:
「見通すと向こうが海になるんですね」
杉野さん:
「今立っている場所っていうのが、僕がいつも言うんですけど黒島のスクランブル交差点なんです。一日に30人ぐらいの人が押し寄せる場所です。神様も降りてくる場所だし、もともとこの建物の中でお祭りの練習をしたりとか人が集まってくる場所だったということもあってこの場所にこだわっていた。ここが旧角海(かどみ)家住宅、北前船の歴史を物語る文化財だったんですけども」
稲垣アナ:
「街としてシンボリックな建物ですもんね。住民のみなさんとしてもショック大きいのでは」
杉野さん:
「この角海家を再建できるかどうかというのは地震の直後から皆さん関心事で、再建されるかどうかが黒島が立ち直れるかどうかというふうに考える方も。この通りから海を見渡す、その風景がすごく好きで。映えスポットとして撮りに来る人もいましたね。この白い砂も綺麗な砂浜だなという感じなんですけど、なかったんですよ地震の前まで。波消しブロックよりも内側でしたね、波打ち際というのは」
稲垣アナ:
「見渡す所、全部海だったんですか」
杉野さん:
「そうです。道路際まで海だったんです。みんなでここで日が暮れるまで海で遊んで、水平線に落ちていく夕日をビール片手に見ながら。戻って、焼き肉して食べたりとかしてました」
稲垣アナ:
「という話をした後に、被災現場を見るとつらいです」
杉野さん:
「あの時は楽しかったという記憶がよみがえることはありますよね」

杉野さんは地震の後、「黒島復興(くろしまふっこう)応援隊(おうえんたい)」という組織を有志と共に立ち上げました。
地区の人たちの要望を聞き、ボランティアに対して瓦の撤去やがれきの除去などの協力を仰ぎ、復興作業を進めています。

稲垣アナ:
「ここにボランティア拠点と書いてありますね」
杉野さん:
「黒島支援隊という姫路を拠点に、この建物の所有者が震災後作った家のきめ細やかな片付けなどの活動をされていて僕ら黒島復興応援隊は力技的な作業をする共同でこの建物をお貸しいただくという形で。ここでもう一度ゲストハウスをさせていただけないかっていうことでお話しをさせていただいて今、ゲストハウスとして再スタートするということで準備を進めています」
稲垣アナ:
「一度は断念しかけた夢をここで」
杉野さん:
「だから2024年夏オープンのはり紙を嘘じゃなくって本当にしたいって今思って」
稲垣アナ:
「旧家の雰囲気漂う、いい木の匂いがしますね」
杉野さん:
「地震で僕は前のゲストハウスの建物を失ったとすれば、それによって得たものというのはそれよりもっともっと得難いものというか大きいと僕は思っています。どれだけ前のゲストハウスをやるときに頑張っているんで応援してくださいとか手伝ってくださいなんて叫んでみてもそんなに人が集まったりとかいろんなつながりがそこからすぐに芽生えることは無かったんですね。この地震というのがそれを掛け算で大きくしてくれた。だからこの場所でもう一度形にしたい」

杉野さんの一番好きな場所に案内してもらいました。

杉野さん:
「水平線に真っ赤な太陽が沈んでいって、黒島の街並みを赤く照らしているんですよね。びっしりと並んだこの黒瓦の街並みとその夕日とがセットで。本当にいいですよ。ここからの夕日。今までは海と黒瓦だったんですけど。そこに白い砂浜も加わったじゃないですか、後は黒瓦を取り戻せば良いところが2つが3つに増えるんです」
稲垣アナ:
「美しい黒島の街並みっていうのは取り戻したいですよね」
杉野さん:
「そうですね。絶対取り戻せますよ」

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