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震災が認知症に及ぼす影響は?金沢大学の篠原准教授に伺う

ドクターおしえて。
今回は「震災が認知症に及ぼす影響」を調査している金沢大学脳神経内科学の篠原准教授に伺います。

金沢大学脳神経内科学准教授の篠原さんは長年認知症の研究を行い、数々の論文を著している認知症の専門家です。

篠原准教授:
私たち金沢大学脳神経内科学のグループは、七尾市中島地区に住む65歳以上全ての住民を対象に、2006年から認知機能の調査を続けています。

稲垣アナウンサー:
どうして中島地区を選ばれたのでしょうか?

篠原准教授:
こちらの地区は、2016年時点で65歳以上の高齢者の割合が40.1%。これは日本の約20年先の人口構成でして、「日本の高齢化を先取りする地域」と言えることなどから調査地域に選びました。そしてこちらは2022年から2023年にかけて行われた調査の結果です。65歳以上の高齢者で認知症を患う人の割合は16.0%。認知症予備軍と言われる「軽度認知障害(MCI)」の人は14.1%でした。また年齢別に見ると、80代後半から90代にかけ、認知症の方がかなり多くなっているのが分かります。

稲垣アナウンサー:
先月国は、2040年に国内の認知症の高齢者が584万人、全高齢者の約15%になるとの推定データを公表しましたが、それを裏付けるデータとも言えますね。

ではテーマに戻りますが、「震災が認知症に及ぼす影響を調査」これはどういう事でしょうか?

篠原准教授:
今回の地震では中島地区も大きな被害を受け、避難所には一時400人近くの住民が避難しました。現在も家の公費解体や修復を待っている方がほとんどで、皆さんこの半年間に大きなストレスを抱えていると予想されます。このストレスが、住民の皆さんの身体機能や認知機能にどう影響するかを調べるというのが今回の目的です。具体的には、これまで行ってきた採血、体力測定、歯科検診、認知機能検査などの
一般的な脳健診に加えて、

今回は住民の方に自分の暮らしや生活環境が震災前と比べてどう変わったかを事前のアンケート調査や対面でのヒアリングで聞き取りました。

医師:
避難所は利用されましたか?

地元住民:
ええ、避難所を転々と。市の職員の方々に『いつまで避難所を渡り歩いとる』と叱られましたけど、自分としてはどうにもならないものですから…

80代男性:
避難所は知らない人ばかりの集まりですから、色んな人がいて気を遣いましたし、
そういう事でも気持ちの上で大変疲れました。

他にこんな方も…

80代女性:
もうストレスだらけです。なんで生きてるんかな…と思って家におりますけど。
心が不安なままで今まで来てます。安心は何もありません

稲垣アナウンサー:
皆さん相当なストレスを抱えていらっしゃいますね…

篠原准教授:
そうですね。「ストレスが認知症を悪化させる原因になる」ことはよく知られています。例えば、ストレスが溜まると脳の記憶を司る部位である「海馬」の神経細胞が死滅していきます。その結果、認知症の周辺症状が出現しやすく、症状の度合いも強くなります。もう一つ、ストレスが溜まると意欲が低下し、何に対しても無関心になりがちです。そのため、必然的に他人との関わりを避け自宅に閉じこもり、
脳への刺激が少なくなります。そうなると認知症の症状が進んでしまうんですね。

稲垣アナウンサー:
こうした震災のストレスと認知症の関係を調査することで見えてきたものを、ぜひこれからに生かして頂きたいです。

篠原准教授:
私たちが行っている中島地区の調査は2400人と大変規模が大きく、過去17年間のデータの蓄積もありますので、より詳細な比較検討ができることが長所です。今後3年間の調査を予定していますが、ぜひ今後につなげられる結果を得たいと思います。
そして今回被災された方は、日々ストレスと向き合い続ける生活を送っていらっしゃると思います。
「自分の趣味を持ち、体を動かす」
「睡眠をしっかり取る」
「少しの時間でも周りの人とおしゃべりする」
などの方法でなるべくストレスをためない生活を送って頂きたいと思います。

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