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「店の再建を被災者の希望の灯に」七尾市の一本杉通り商店街・高澤ろうそく店 再出発の“うるしろうそく”
復興に向け前を向く人々に話を聞く「能登人を訪ねて」今回は、七尾市の一本杉通り商店街、歴史ある店の復興を目指す男性に会いに行きました。
稲垣キャスター:
七尾市の中心部に位置する一本杉通りにやってきました。およそ450メートルほどの通りに50軒ほどの商店が立ち並んでいましたが元日の地震で多くの建物が被害を受け、いまだ休業を余儀なくされているお店も少なくありません。こうした中、復興に向けて活動する能登人がいます。
130年以上の歴史を持つ高澤ろうそく店にお邪魔しました。こちらで作っているのは和ろうそく。植物の実などから採ったロウを用い、和紙を芯に使った日本最古のろうそくです。植物油を使っているのですすが出にくく、炎が大きく消えにくいという特徴があります。
高澤久さん:
仮店舗というかたちで3月14日にオープンすることができました。
稲垣:
仮店舗を営業しようという原動力は。
高澤さん:
お店を開きたいということはいち早く思っていましてお客様と顔を会わせていろんな会話をしながらお買い物できる、そういう場所がお店だと思いましたので、なるべく早く開店したいなと思っていました。
以前の店舗は国の登録有形文化財に指定されていました。そのお店が地震でどうなったのか、高沢さんと共に見に行きました。
高澤さん:
ここが元々のお店ですね。旧店舗と言っていいかな、本店です。元々のお店は2階の部分から屋根が張り出していてそれが地震で崩れてしまいました。主屋部分も大きく左に傾いています。50~60センチ隙間がありますが、本当はくっついてました。地震の後は余震がたくさんあったので、このままだと完全に倒れてしまう危険性があったのでこれ以上倒れないように中で補強している状況ですね。これは再建したいということですね。新しく建て直すんじゃなくて、元の材料を使いながら再建するためそのために今、保存してあります。
稲垣:
発災直後は再建などは思い浮かばなかったですよね。
高澤さん:
実はですね1月2日に家族と一緒に七尾に戻ってきまして避難所に両親が避難をしていて夜9時ぐらいに再会をしまして無事を喜んだ時に父から絶対再建しようと、何としても再建しようと言葉をもらって。皆さんからも愛されているお店だったので再建しようと。
稲垣:
高澤さんのところはご一家で、すぐに前を向いて歩み続けてきたんですね。
高澤さん:
地震被害に沢山の人があっているので、そのためにできることはなんだろうかと考えたときに、ひとつは僕たちのお店を元通りに再建するっていうことは、この能登半島地震によって被害にあわれた方にとっても希望の灯みたいなところになるんじゃないかなと思って。
工房にお邪魔しました。
こちらではろうそく一本一本、すべて手作りで製造しています。
稲垣:
工房の地震被害は。
高澤さん:
建物が大きくつぶれるということはなかったんですけども中はぐちゃぐちゃでした。天井は落ちてましたし、ろうそくを作るために必要な道具も全部床に散乱してて、どこから手を付けたらいいかというような状況でした。
稲垣:
ろうそく作りに大事なものは。
高澤さん:
一番大事なのはろうを溶かすための釜ですね。これが割れてしまうとロウを溶かすことができないので、まずはこれが無事だったこと、無傷でした。
稲垣:
ろうそくをなんとか作ることができそうだった。
高澤さん:
一番苦労したのが水です。水道の供給ができてなくて、2月終わりくらいにしか水道が通らなかったんですけども、型にロウを流し込んで固まらせるですけど、水で冷却するんですね。型そのものも水につけてありますし、水というのは大事な存在で、ろうそく作りには必要不可欠です。それでどうしたかというと田にひくための共同で使う井戸があったんですね。そこからポンプで吸い上げて、工房の配管につないだ。これでろうそく作れるなと、お客さんにろうそく届けることができるなという安心感が大きかった、ほっとした。
稲垣:
今はどんなろうそくを作ってますか?
高澤さん:
うるしろうそくを作っています。塗る方の樹液ではなくて、漆の実からロウを採りましてこれを材料にして作るものです。漆からろうそくを作っているのは我々だけですね。
稲垣:
今回地震あったじゃないですか、原料の漆は大丈夫だったんですか。
高澤さん:
収穫してくれる方が残念ながら家が住めない状況になってしまったと。でも実は無事だから取りに来ていいよと電話で聞きまして大切に大切に実をいただいてきました。
稲垣:
様々な方の願いや思いがこもっているわけですね。
高澤さん:
毎年作るうるしろうそくですけども、今年は特別な年ですね。地震被害を免れた漆の実から作るうるしろうそく。感慨ひとしおですね。
稲垣:
半年経ちましたが今後は。
高澤さん:
ひとつはお店の再建が目標です。この能登の風土になじんだ、一本杉の風土になじんだお店を作りたいなと思っています。
稲垣:
まもなく新盆を迎えますが能登の方々にとっては今年は特別な盆になるのでは。
高澤さん:
地震を経験すると身近な人が亡くなった方がたくさんいらっしゃるのではないかと思います。手を合わせてご先祖様に感謝する、生きていることを感謝すると共に亡くなられた方にもありがとうの気持ちを持って今年は私自身もお墓参りしたいなと思います。