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能登の豪雨で中3の孫が犠牲に…「翼音の為にも」輪島塗の蒔絵師の祖父が“フクロウのカップ”に込めた想い

能登豪雨犠牲となった中学3年生の喜三翼音さん。祖父の誠志さんは輪島塗の蒔絵師です。告別式から1週間後、家族の姿は店先にありました。そこには翼音さんがお気に入りだったある作品が並べられていました。

祖父・誠志さん:
「『可愛いし絶対に売れるからコレいっぱい作った方がいいって翼音が売ってあげる』って言ってたんですよ」

18日、金沢市内のイベントに出張輪島朝市の一員として出店したのは翼音さんの祖父、喜三誠志さん(63)です。店先には孫、翼音さんの写真が飾られていました。

祖父・誠志さん:
「翼音の気持ちも考えて、やっぱりみんなで頑張ってこうと、そういう風に決めて、頑張ろうとしてます」

豪雨災害前の今年5月、石川テレビの取材映像です。クラスメイトと、楽しげに過ごす翼音さんの姿がありました。しかし、このおよそ4カ月後…

中学3年生の翼音さん(14)は能登半島を襲った記録的豪雨の犠牲者となってしまいました。行方が分からなくなって10日。翼音さんは福井県沖で地元の漁師によって発見されました。

父・鷹也さん:
「漁師さんが『娘さんは頑張りました、褒めてあげてください』と言った言葉に涙が止まりませんでした。『じいちゃん、ばあちゃんの出張朝市の手伝いをしたい』と言ってました。14歳という若さで亡くなりこれ以上の悲しみはありません」

しめやかに営まれた翼音さんの葬儀。

祖父・誠志さん:
「つらくて、悲しくて、さみしかったですよ。未だにまだ現実を受け止められてはいないです。正直言って」

孫を失った悲しみの中、誠志さんたちが取材に応じてくれる理由を明かしてくれました。

祖父・誠志さん:
「翼音の死を絶対に無駄にしたくないですし、これから色んな災害が起こると思うんですよ。その時に何もいらないから、ただ命だけはみんな助かるような行動をして頂きたい。2度と私たちのような悲しいことにならないように皆さんに気を付けて頂きたいっていう願いがあります。だから皆さんこれからも気を付けてください」

葬儀から5日、誠志さんは地震後に移り住んだ家で黙々と蒔絵の作業に向き合っていました。

祖父・誠志さん:
「地震など色々ありまして、作業をする種類はできる仕事ってのは限られてますけれど、ここではこういった割りと手の込まないような絵付けをしている」

妻の悦子さんと共に輪島朝市に店を構えていた誠志さん。店は地震で倒壊し、焼失するも残された道具で蒔絵作業を再開していました。

祖父・誠志さん:
「8月終わりごろですかね。うちの孫(翼音)がここに来てた時、ここで仕事してた時『フクロウが可愛いから売れる』って言ったんですよね。『だからフクロウいっぱい作った方がいいよ、じいちゃん』って言った。その言葉は今でも覚えてますけどねハッキリと。(それまでフクロウは)描いてなかったです。翼音の為にも頑張っていかないといけないなっていう思いでやってます」

19日、金城大学で始まった学園祭。誠志さんの店先には翼音さんお気に入りのフクロウのカップが並べられました。店番に立つのは父・鷹也さんと祖母の悦子さん。翼音さんと共に。

フクロウのカップを購入した女性:
「フクロウと雪月花のカップ(を買いました)。ちょっとでも力になれたらって言ったらおこがましいですけど、少しできることがあればという思いもあって。乗り越えてまた頑張って頂きたい」

購入した男性:「とっても可愛くて心がこもってるデザイン。翼音さんの思いがこもってるなと思いました」

父・鷹也さん:
「店頭は全く経験はないです。翼音がいれば僕がやることは無かったんですけど、少しでも(翼音の)代わりになれればと思って頑張ろうと思いました。『家族みんなで頑張ってるよ』って翼音に言いたい」

同じ日、県産業展示館では祖父、誠志さんも翼音さんと店先に。

祖父・誠志さん:
「翼音さんと一緒に頑張ってるんだよってことで常に胸の中にはずっと生きてると思ってますので、そういう思いでやらせてもらってる。翼音の思い出がね、ぎっしりと詰まった図柄、フクロウなんでこれはずっと私が元気なうちは描き続けていきます」

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