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アルツハイマー病の予防につながる?世界初!脳の「シワ」の役割を解明!
認知症患者の約7割を占めると言われている「アルツハイマー病」。脳に長年蓄積した老廃物の一種「アミロイドβ」が脳の神経細胞を傷害することで発症すると考えられています。そしてこのアミロイドβを取り除き、症状の進行を抑える働きがある
「レカネマブ」や「ドナネマブ」といった新薬の投与が始まっています。
こうした中、金沢大学が発表したのは、アルツハイマー病の予防にもつながる世界初の大発見。ポイントは私たち誰もが持っている脳の「しわ」です。
河崎洋志教授:
「私達の脳、特に大脳は多くの『しわ』で覆われています。私達の今回の研究によって、『しわが存在することで 大脳のゴミを効率よく洗い流すことができるようになった』ということが分かりました。」
脳神経医学の専門家金沢大学の河崎洋志教授です。
人間の脳は、安静時でも体全体のエネルギーの約20%を消費するといわれるほど活発に活動しています。その分、脳内では老廃物が日々大量に発生します。この中には、アルツハイマー病を引き起こすとされる「アミロイドβ」も…。それを処理しているのが、脳の周りを満たす「脳脊髄液」です。
河崎教授:
「こちらは脳の表面を拡大してあります。脳脊髄液は脳の中に入ってきて、脳内を流れていく途中で 脳の中のゴミ・老廃物などを取り込んで、これを脳の外に洗い流していきます」
では、脳の『しわ』はどんな関係があるのでしょうか?河崎教授たちの研究グループは、人間と同じく脳にしわが存在するフェレットの脳脊髄液に色素を注入し、脳内へのしみこみ具合を観察しました。すると…
河崎教授:
「これはフェレットの脳の断面の写真ですが、色素が脳の溝の奥のところから非常に効率よくしみ込んでいるということを我々は見出しました。」
これまで行っていた脳にしわを持たないマウスでの実験では、脳脊髄液は脳の表面全体にしみこんでいました。こうした経験から、フェレットの脳の溝の奥には液がしみこみにくいと考えていたそうですが…。
河崎教授:
「実際に実験をしてみますと予測とは全く逆で、脳の溝のところから多くしみ込んでいることが分かって…これは脳の深いところまで洗い流すために非常に効率のいい仕組みですので、我々の脳は非常に面白い仕組みを持っているなとビックリしました。」
溝の部分の細胞を詳しく調べると、水を通しやすくする遺伝子「アクアポリン4」が多く存在していることが分かりました。つまり人間の脳は、脳の『しわ』へより多くの脳脊髄液を流すようにできているのです。脳の奥の方にも多く溜まる老廃物。それらを効率よく洗い流し、常に脳全体を正常な状態に保つために人間は脳のしわを獲得したのではと研究グループは考えています。
河崎教授は今回の発見を、アルツハイマー病の予防などに役立てたいと話します。
河崎教授:
「アルツハイマー病になりかけの頃に、もしかすると先ほど紹介した(水を通しやすくする)アクアポリン4という遺伝子が減ってきている、(老廃物を洗い流す)効率が悪くなっているということが見られる可能性があると思っています。アルツハイマー病になりそうな方をもしかすると検査で見つけてくることが今後可能になるかもしれません。」
脳の老廃物を洗い流す仕組みが最もよく働くのは「寝ている時」であるという研究成果が良く知られていて、研究グループでは今後、「睡眠時の脳の溝での脳脊髄液の流れ」を詳しく調べることにしています。「脳のしわの役割が分かった」という金沢大学の今回の大発見。4日、イギリスの有力学術雑誌「ネイチャーコミュニケーションズ」に掲載され、今後世界的に大きな話題となっていくことは間違いありません。