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熊本地震では33人が仮設住宅で孤独死…小さな積み重ねで「孤立」を防ぐ

地震で自宅が全壊した人などのために石川県が設ける応急仮設住宅。

県内9つの市と町であわせて4943戸が完成し、3865世帯8304人が入居しています。

来月には6810戸が完成する予定です。

こうした中、懸念されているのが仮設暮らしで住民が「孤立」することです。

仮設住宅に1人で暮らす90代の男性:
(仮設住宅に知り合いは?)「いま、現在はいないですね。あんまり出かけていない、散歩に行ったら足はふらつくし…」

災害社会学が専門の北陸学院大学、田中純一教授も警鐘を鳴らしています。

田中純一教授:
「同じ場所にできるだけ元の集落の方が集まるように配慮はされていますけども必ずしもそういった形で割り当てられているわけではない。(住民と)つながりにくい人たちが出始める仮設団地があるだろう」

周りに頼れる人がいるかどうか、仮設住宅の住民に聞いてみると…

1人暮らしの住民:
「ここに来たら知らない人ばっかり全然遊びに行くところもないし」

夫婦2人暮らしの住民:
「主人も一人っ子やしわたしも一人っ子やから兄弟もいないし全くふたりやから仲良くやっていかないとね。そんな親しくないからね、ここに入ったばっかりだから4月から、できることだったら夫婦でお互いにやっていかないと仕方がない」

2016年に起きた熊本地震では仮設住宅に(みなし含む)1人で暮らしていた33人が孤独死したとみられています。

仮設住宅での「孤立」は命に関わる問題なのです。

入居者の孤立を防ぐために重要な役割を担うのが「集会所」です。

珠洲市正院町の集会所では住民同士の繋がりを深めようと、地元の民生委員などが 週3回のペースで、イベントを企画しています。

この日は仮設住宅の入居者を中心に15人ほどが参加し、地元の小学生と一緒にポチ袋を作って楽しみました。

★参加者「童心に帰って楽しんでいます」(もともと知り合い?)「町内が違うので…」「この集会所で知り合ったよね」「友達が出来るとは思わなかった、やっぱり出てこなきゃだめだね」「明日起きたら、きょうはここへ行く日やって思って楽しみにしています」

ここではイベントに参加した人を毎回記録していて、仮設住宅に入居する人たちの見守りにもつながっています。

しかし仮設住宅に集会所があるだけで、孤立を防げるわけではありません。

田中教授「集会所はそういった機能を持つ大事な拠点だと思うんですが集会所そのものがあってもカギがかかったままで使われていないというところがあります。外部との窓口になる人、内部をうまく取りまとめていく人が必要」

集会所に加えて、仮設住宅に必要なもの。

田中教授が挙げるのは住民をまとめる「自治会」の存在です。

仮設住宅では自分以外にどんな人が入居しているのかを知りたくても、個人情報という理由で自治体は教えてくれません。

しかしもし自治会があれば自治体によっては代表者に名簿を共有する所もあり、 高齢者などの見守りに活用することもできます。

輪島市では31カ所ある仮設住宅のうち、自治会が結成されているのは5カ所だけ。

また珠洲市でも行政とのパイプ役になる「管理員」を設置するよう働きかけていますが、18カ所ある仮設住宅のうち、管理員がいるのは7カ所にとどまっています。

田中教授:
「こんな風にやるということで(自治会の活動が)上手くいくんだという過去のモデルケースを紹介することでやってみようという機運が高まるかもしれない、これは行政ができると思う。関係づくりは半年後とか1年後とかじゃなく今作っていかなければいけないと思っています」

住民の孤立をいかにして防ぐか。田中教授も独自の取り組みを行っています。

この日学生たちと一緒に設置したのはみんなで使えるベンチ。

これも立派な「孤立」対策だといいます。

田中教授:
「横に腰かけて、そこから会話が生まれて心配事とか悩み事があっても人に話すことですっきりしたりあるいは解決策を聞き出したりこれは1人で部屋の中にこもっていても起きないこと、それでみんなで話すことをやってほしい。ベンチ自体は些細な事なんですけどこれをみなさんがどういった風に使っていくかによって変わってくると思う」

こうした小さな積み重ねが住民の孤立を防ぐことにつながります。

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