石川テレビニュース
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震源より遠いのに津波が早く到達…海底地滑りが原因か?石川県内でも起きる可能性も
能登半島地震では能登の外浦を中心に最大5mの津波が押し寄せました。
実はこの津波に関して、お隣の富山県では不思議な現象が観測されていました。
去年の元日午後4時10分に地震が発生。七尾港で津波の第一波が観測されたのはそれから27分後の午後4時37分だったのに対し、高岡市伏木では地震発生からわずか2分後の午後4時12分、富山市でも3分後の午後4時13分に津波の第一波が観測されていたのです。その原因として考えられたのが、地震によって富山湾で大規模な「海底地すべり」が発生し、それが津波を引き起こしたということです。実は県内でも起きるかもしれない「想定外の津波」そのメカニズムを取材してきました。
ロバート・ジェンキンズ金沢大学准教授:
「この崖面そのものには一切生物が付いていない。ブロックがパキッと割れて生じたような割れ目がほとんど侵食されていない。ここが今回、海底地滑りを起きて生じた崖だと思います。」
古生物学が専門の金沢大学・ロバート・ジェンキンズ准教授です。
ジェンキンズ准教授は、去年10月から12月に富山大学の立石良(たていしりょう)准教授を中心とする共同研究グループに参加しました。
そこで、富山県の神通川(じんづうがわ)河口沖と庄川・小矢部川河口付近の海底で水中ドローンを使った撮影を行いました。
神通川河口から4キロ沖の水深およそ300m地点の映像を見てみると…
稲垣アナ:
「崩れたこの崖面の高さはどれぐらいだったんですか?」
ジェンキンズ准教授:
「約80メートルぐらいです。それがボンと落ち込んだりすると、それによって海面が引きずられますので、そういったところで実は津波が発生します。」
津波は一般的に、地下で起きた断層が海底に達し、海底をずらすことで海面が変動して起こります。同じように海底地すべりでも海面が大きく上下し、津波が発生するのです。
ジェンキンズ准教授:
「沿岸で海底地滑りが起きた場合は、自分たちが住んでいる町から数キロのところで津波が同時多発的にいろんなところで発生し得ると。それで近い距離のところは(地震による津波)より早く到達する、ということになってしまうわけです。」
富山湾では能登半島地震の際、複数の場所で同時に海底地すべりが起こったことが分かっています。
それでは、石川県沿岸で、海底地すべりは発生していたのでしょうか?ジェンキンズ准教授は、調査はまだ進んでいないとした上でこう話しました。
ジェンキンズ准教授:
「実は(富山湾と)似たようなところは能登の沖合にも結構ありまして、そういうところでもこれからちょっと離れたところで起きた地震とかの余波でそういうところがまた崩れるという危険性はあると思っています。」
今回の発見を機に県民に伝えたいことは…
ジェンキンズ准教授:
「まずこの海底地滑りによる津波というのが生じ得ると。海底地滑りが起きたかどうかを検知することはできませんし、津波のハザードマップって各市町村で作られていますけどもそのハザードマップにも実は海底地滑り起源の津波というのはほぼ想定されていないです。なので、そういう『想定外になっている津波』というのが実はどこでも生じ得ると(海底地すべりが)どこで発生しているのかわからないので、とにかく沿岸にいるときに地震を感じたら『もう津波が来るんだ』という前提で避難する行動にまず移って頂きたいと思っています。」
稲垣アナ:
石川県内はどうなのかについて、ジェンキンズ准教授によると、「県内沿岸域での 海底地すべり調査は まだ行われていないのが現状」だということです。富山湾は海岸の近くから急に深くなっていることが大きな特徴です。この崖の周辺では海底地すべりが起こりやすく崖は内浦沿いにも広がっているので津波と同時に海底地すべりが発生していた可能性は否定できません。
海底地すべりはどこで起こるのか分からないのでハザードマップに反映することができません。もし海底地すべりが起きてしまったら津波注意報や津波の到達予測が出ていなくても、津波が起きる可能性があるということなんです。
震源が陸地・海底に関わらず大きな地震が発生した場合、沿岸にお住まいの方はすぐに高台へ逃げることを心掛けて頂きたいと思います。