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「死なんよ、まだ。俺の仕事」家の下敷きから生還した男性が撮影する故郷の祭りへの思い

地震で甚大な被害を受けた珠洲市の蛸島町で、規模を縮小しながらもキリコ祭りが行われました。「この町に生かされた自分が撮る」特別な思いで祭りを撮影する      男性を取材しました。

珠洲市の蛸島キリコ祭り。地震の爪痕が残る中を豪華絢爛なキリコが練り歩きました。祭りを撮影する巽通敏(たつみ みちとし)さん。今年は特別な思いがありました。

巽さん:
「このキリコがあるおかげで若い人から年配の方まで一致団結していますからね。近所の繋がりがあるから、みなさん助けてくれたようなもんですね」

「何がどうなっとるの?」

元日の能登半島地震、巽さんは崩れた自宅の下敷きとなりました。津波の恐怖と寒さに耐え、15時間。翌朝、まだ余震が続く中で巽さんを助け出してくれたのは近所の人たちでした。

巽さんの兄:
「そこのドアが開いたので、あのドアからはいって明かり見えるかって」

20代の頃から記録係として祭りを撮影し続けてきた巽さん。愛用のカメラも無事でした。

北濱稜人(きたはまりょうと)さん。巽さんを助け出した1人です。

北濱さん:
「祭りの記録とか全部してくれるんで、大事な町内の人です」
Q これからも撮るしかないですね
巽さん:
「くたばれませんね」

町内に響く太鼓の音。地震で負ったケガは完治していませんがこの日ばかりは体が動きます。

巽さん:
「ほら、スキップもできる」
近所の人:
「元気そうで良かった」
巽:
「死なんよ、まだ。俺の仕事。誰にも渡さん。みんなのおかげや」
近所の人:
「ほんとやほんとや、がんばらんか」
巽:
「年寄は泣いてますから。あんたよう生きとったねって。あんたに言われとうない」

夜、始まったのは250年以上前から、地元の若者が代々演じてきた「早船狂言」です。

巽さんも約30年前に出演し、その翌年からはカメラマンとして後輩の姿を記録してきました。

「終わりましたねー。完全に生きがいです、私の。まだまだ残していきたいですね」

町の伝統、そして復興への歩み。「この町に生かされた」自分だからこれからも撮り続ける。それが巽さんの決意です。

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